マイナンバー制度の導入に想う

Last-modified: Mon, 24 Dec 2018 16:53:40 JST (1972d)
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 改正マイナンバー法が成立し、来月にはマイナンバーが通知され、来年から運用が開始されるそうである。
 安保法案が国民に理解されていなくても良いとは言わないが、実生活に密着しているはずのマイナンバー制度も未だに国民に理解されていないと思うが、このままで良いのだろうか。

 以前、新国立競技場建設で問題点ばかりが議論されていて、どこが良いのかの話題がまったく出なかったことが不思議だった。 しかし、今回のマイナンバー制度については、何がメリットかばかりが強調されて、問題点や注意点の説明が意識的に避けられているのではないかとの危惧さえ感じる。

 また、第一印象として違和感があるのは、自民党や民主党が積極的で、マスコミと幸福党が揃って反対しているという構図である。

 マイナンバー制度にはいろんな解決しなければならない論点があるようだが、ここでは下記論点について考えてみる。
 ・情報セキュリティ
 ・政府による金融資産等の監視

1.情報セキュリティ
 制度導入に当たって、政府等の障害となる現行法の改正については、かなり検討されたようである。 しかし、制度導入に当たって新たに発生すると予想されるリスク対応については、どこまで検討されたのだろうか。 これには、いくつかの視点がある。
 ・政府による情報管理
 ・自治体等による情報管理
 ・一般企業等による情報管理
 ・国民の情報管理

(1)政府による情報管理
 情報管理については、設備上の対策と人に関わる対策とがある。 いつものことだが、これらについては一般の者には知らされないので、確実になされるよう期待し、ここでは論じない。

(2)自治体等による情報管理
 しっかりとした自治体等は、当然確実に対応すると思慮する。 しかし、すべての自治体等が確実に対応するとはとても思えない。 仮に、確実に対応するというのであれば、せめてそのような指導内容なり、確証となるものを国民に示すべきだろう。

 年金機構の情報流出問題により年金との連結が延期されるそうである。 たまたま、年金機構は問題を起こしたが、他の自治体等はそのような問題を起こさないという保証はどこにあるのだろうか。
 情報管理は、堤防と同様、99%ではなく100%の対策を必要とする。 堤防の一部にアリの一穴があっても、そこから漏れたら大惨事になるのである。 情報管理も同様である。

(3)一般企業等による情報管理
 一般企業等への情報管理については、ビジネスとして話題が世の中に氾濫しているようである。 しかし、これについても、すべての企業等が確実な対応ができるのだろうか。 国は情報管理事故を起こした企業等を都度処罰していけばよいと考えているのかもしれないが、これについても先ほどの堤防論と同様である。
 民間に情報管理の指導を任せるのではなく、国として企業等が最低限の情報管理を行えるような仕組みを構築し、指導すべきだと思慮する。

(4)国民の情報管理
 情報管理に自信がない国民は利用するな、という方針のようである。 しかし現実問題として、国民がマイナンバーを無視して一般生活を送れるのだろうか。 マイナンバーカードの所持をしなかったとしても、勤務先などマイナンバーの提示義務が随所で発生してくると思われる。

 仮に、多くの国民がマイナンバーを無視した生活を送れるとしたら、マイナンバーの導入効果はないということになってしまうと思慮する。
 詐欺師やヤクザが喜ぶような制度には、しないでいただきたい。

2.政府による金融資産等の監視
 幸福党などが反対している理由として、政府による将来的な金融資産等の監視強化の懸念があるようである。 政府が将来監視強化をすると言っているのだろうか。 あるいは、幸福党のお得意の将来預言として、政府の監視強化があるのだろうか。

 マイナンバー導入と政府監視強化とは、直接には無関係であると思慮する。
 このことは、原子力発電推進に対して、核爆弾開発反対を謳っているのと同じだと思慮する。 原子力発電推進は、国民経済の発展には不可欠のものであり、事故を起こさないような仕組みの構築と平和利用の限定をいかに行うかが課題だと思慮している。

 同様に、マイナンバー制度導入は、行政サービスの改善に不可欠のものであり、情報管理事故を起こさない仕組みの構築と過剰な政府監視の歯止めが課題だという事ではないだろうか。

 ちなみに、現状でも税務署により、ある程度の金融資産等の監視はなされていると思われる。 事務効率の話は別として、この機会に政府監視情報の拡大がなされるようであれば、これについてどのような制限を掛けるかを議論すれば良いことであり、マイナンバー制度そのものに反対するのは筋違いだと思慮するが、いかがだろうか。


―2015.9.12―