元ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ氏来日に思う

Last-modified: Wed, 07 Nov 2018 18:38:05 JST (2019d)
Top > 元ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ氏来日に思う

 失礼な表現だと思うが、「世界一貧乏な大統領」として紹介されている元ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ氏が来日した。

 ムヒカ氏は常に柔和な笑みを絶やさない人格者風であり、池上彰氏が言うように高僧を思わせるような言葉が次々と発せられていた。
 物欲に溺れるな、足ることを知れ、中庸の重要性、等々、厳しい政治家という面もあったが、宗教家を思わせる発言が目立った。

 しかし、適切な表現ではないかもしれないが、全体として非常に左翼的で危険な香りを漂わせた方のような感じを抱いた。 実際の本人の心のうちは分からないが、少なくともムヒカ氏を迎える日本側としては正しい方向にお話を受け取る必要があるのではないだろうか。

 「ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのか」との問いがあった。 だからこそ、我々はインド人など世界中の人々が自由に車を持てる世界を実現させるためにいろいろな努力をする必要があるのだろう。

 無理にすべての人々に車を持たせる必要もないが、今すぐ実現はしないとしても世界の人々が車を持てる社会の実現を最初からあきらめる必要もないだろう。 確かに行きすぎた消費社会に気をつける必要はあるのだろうが、行きすぎた富裕社会否定は危険な思想であると考える。

 人類は発展のために生まれたのではなく幸せになるために生まれてきたと言っているが、発展を伴わない幸せはあるのだろうか。
 幸せとは、川や風のようなものだと考えている。 確かに、大量の水が流れれば洪水になり、大量の空気が流れれば嵐になる。 しかし、水の流れが止まればボウフラが湧く水たまりになり、空気の流れが止まれば不快指数が高くなるぐらいである。

 ムヒカ氏は、川のせせらぎ程度がベストだと考えているのかもしれないが、山から大量の栄養分を運んでくれる大河も文明の発展には必要である。 もしかしたら、大河の氾濫も文明の興隆に不可欠なのかもしれない。

 ムヒカ氏にとって、人生で最も大切なものは自分や家族などのために自由にできる「時間」だそうである。 お金はその時間を買うための手段であり、モノを買うためのお金を稼ぐことに自分の時間を消費するのは、目的と手段の取り違えであるそうである。

 問題は、その自由な時間をいかに有意義に過ごすかであり、自由に過ごすこと事態が目的化しているのであれば、それこそが目的と手段の取り違えではないだろうか。

 子供時代はさておき、自由な時間をいかに人のために過ごせるかが、人生における幸せ(価値)であると考えている。 最低限は、配偶者や子供のために、そして友人や地域のために。 大きくは町や国など日々接しない人のために何かをすることだと考える。 もっと大きく言えば、後世の人のためにどれだけ遺すことができるかということもあるのだろう。

 この時空間において、どれだけ多くの人にどれだけの高い貢献ができたかの人生での積分量がその人の価値だと考える。 いただいた対価以上の付加価値があることが前提となるが、ビジネスを通じた貢献であっても価値はあると思慮する。 ただし、この貢献にはマイナス値もあることにも留意する必要がある。

 ムヒカ夫妻は台所で結婚式?を挙げたそうである。 神に誓うという発想のない無神論者だからなのだろうが、二人は夫婦というより同志という感覚なのだろうか。

 大学生は深い洞察力を持って物事をみれるが、一般人は無邪気に物事を信じるというムヒカ氏の発言を面白いと思った。 日本では、一般社会人にはそれなりの洞察力があるが、SEALDsに代表されるように、社会を知らない多くの大学生は無邪気に物事を信じると思っている。 恐らく、文化の違いだろう。

参考
リオ会議でもっとも衝撃的なスピーチ:ムヒカ大統領のスピーチ (日本語版)
・ホセ・ムヒカ講演会「日本人は本当に幸せですか?」
 (東京外国語大学 2016.04.07)
・「とれたてフジテレビ」
 “世界でいちばん貧しい大統領”ムヒカ来日緊急特番
  ~日本人は本当に幸せですか?~
   (4月8日(金)19時~20時54分)


―2016.4.29―