内部通報者保護について思う

Last-modified: Sun, 21 Oct 2018 14:33:05 JST (2036d)
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 「公益通報者保護法」という法律があるが、内部通報者がほとんど保護されないのが日本社会なのではないだろうか。 一般に言われている理由は、次のようである。
・罰則のない法律である
・通報対象の条件が厳しい

 罰則がないのは、内部通報者が不当に扱われているという客観的事実が非常に分かりにくいからだと思慮する。
 通報対象条件が厳しいことについては、濫用・悪用されると、通常の組織活動が容易に阻害される可能性が出てくるためと推察する。

 今騒がれている文科省や防衛省の内部通報についても、おそらく彼らの組織防衛のために上司である政府を陥れようとする通報の可能性が大きく、時の政府を攻撃したい左翼メディアや野党にとって格好の材料提供となっており、非常に危険なものを感じてしまう。

 当該法ができるきっかけとなった当該企業の代表は政府自由民主党の要職にいたこともザル法になったことと無関係ではないのかもしれない。 ちなみに、別件で当該企業の既得権益維持もあり、当該法の施行後まもなく関係政治家は自由民主党から離党している。

 ただ、当該法の批判をすることは容易ではあるが、組織に不利益をもたらした内部通報者を許せないのが普通の組織というか人間だとも思うので、法律で通報者を守りきることは不可能ではと思ったりする。

 以前発覚した超大企業の不正会計についても、当事者からしてみれば、いつの段階で内部通報すればベストだったのかの判断は極めて難しい問題だったのではないかと思慮する。 そのような組織を許さないという社会の醸成が必要というか、左傾化していないメディアなり人権団体などの内部通報者への、その後のフォローなどが必要なのだろう。

 法律論とは別に、具体的にはこの問題を解決するには、次の何れかが必要だと思慮する。
・当該通報者は、組織に不利益をもたらしたのではなく、利益をもたらしたのだと、少なくとも組織内の幹部たちがしっかりと反省する。
 あるいは、そのような幹部たちに入れ替える。
・当該通報者が組織への功労者として組織から外れる。 終身雇用が基本の日本ではこれが難しいと思慮する。 業界ぐるみの談合などの場合は、業界が組織となるため、よりハードルが高くなってくる。
・内部通報者が誰かを当該組織に対して完全に隠し通す。 これも不可能に近い。

 そのためには、法律をつくることで完成と考えたり、組織を罰することで終了と考えたりするのではなく、センシティブな問題として、しっかりとした人間的な運用がなされることが必須となる。

 ちなみに、先の文科省や防衛省の内部通報については、既存組織から歓迎されるような内部通報者であり、組織の既得権益維持集団の一員であり、当該法にはまったく馴染まない。 このような輩が発生する懸念が内在しているからこそ、公益通報者保護法は難しいのではと思慮する。

参考