広島市の病院における理学療法士の女性のマタハラ訴訟について

Last-modified: Tue, 01 Jan 2019 21:54:16 JST (1964d)
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 広島市の病院に勤務していた理学療法士の女性が、妊娠後に降格させられたのは男女雇用機会均等法に違反するとして病院側に損害賠償を求めていた訴訟で、広島高裁に差し戻す上告審判決を下した。

 働く女性が、妊娠や育児を期に職場で不利な扱いを受けたり、不当ないじめにあったりすることはあってはならないと思慮する。 だとして、当理学療法士の方の勤務環境を詳細に理解していないためかもしれないが、判決の趣旨が理解できない。

 組織によって異なるかもしれないが、一般に「降格」には、「職位」の引下げと「職能資格」の引下げがある。 妊娠・育児を期に、職能資格を低下させることはよほど特別な理由なくして許されることではないと思慮するが、副主任を免ずるなど職位を低下させることは、それほど稀なことではないと思慮する。 まして今回、本人から軽易業務の希望があったということであれば、その一つの手法として職位の低下がなされることは、組織として十分ありうることだと思慮する。

・副主任を免ぜられたこと自体による軽易業務への転換により受けた有利な影響の内容や程度が明らかではない。
・副主任への復帰の予定もない。
などと、最高裁の判決文に書かれているそうである。

 最高裁は、副主任という肩書は飾り程度のものだと言いたいのだろうか。 病院が飾りの副主任に役職手当を付けているとするなら、そこにこそ問題があることになる。
 また、職能資格は一つの組織で簡単に上下するものではないが、副主任などの職位は、職場の変更等により、わりと簡単に付いたり外れたりするものである。(私の周りだけかも知れないが)
 まして、今後の職位の付与につて上司が確約できるものでもない。

 世間知らずの裁判官の判決という印象を受けた。

 繰り返しになるが、妊娠・育児は人類存続に不可欠なものであり、該当者に対して周りの者が協力するのは当然のことだと思慮する。 だからといって、企業での貢献度の落ちた者に対して、落ちる前の給与を保証せよと言われても、無理な話である。 仮に、法律で義務付けるのであれば、国なり自治体なりが、それに見合う金額を補助する必要があると思慮する。
 それもなしに義務付けられれば、企業は、妊娠・育児の可能性のある女性の採用を控えることになるだろう。

 育児問題でいつも考えるのは、爺婆との同居問題である。
 爺婆を仕事のない地方において、仕方なく都会に出て働いている夫婦であれば仕方がないのかもしれない。 しかし、そのような事情もなしに、単に爺婆との同居がいや、子供の面倒にはなりたくない、老後は気楽な年金生活を送りたいなどの勝手な理由で親子が同居せずに、そのしわ寄せを企業に求めるのであれば、いかがなものか。

 三世帯家族の崩壊を促進するような法制度にはして欲しくないものである。


―2014.10.24―