日ロ首脳会談における北方領土問題の対応について

Last-modified: Sun, 21 Oct 2018 15:07:25 JST (2036d)
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 安倍首相とプーチン・ロシア大統領との会談において、北方領土の返還については平行線のまま、全く前進がなかったといって、日本の野党やメディアだけでなく、自由民主党内からも批判があるようだ。 安倍首相やプーチン大統領の心の内は知らないが、楽観的に考えて今回の会談は、日ロにとって大きな進歩だと思慮する。

 詳細は知らないが、北方4島に対して次のような方針で今後の協議が進められると理解している。
・北方4島が、ロシアに帰属することを許容する
・北方4島に、「特別な制度」を適用する
・北方4島で、共同経済活動を実現する

「北方4島の帰属」
 戦後70年を過ぎてしまっており、今後も4島の帰属を論ずることによって、無駄な時間を浪費すべきではないと思慮する。 日本の外交交渉下手を反省して、速やかに終了にすべきと思慮する。

「特別な制度」
 ロシアの法律を適用するというのであれば従来と変わらないが、「特別な制度」にするというのであれば、その制度によっては良い話だと思慮する。
・ロシア人はもちろん、日本人や日本企業も自由に出入りして居住し、活動できるようにしてほしい。
・漁業権など、北方4島に帰属する資源は、日ロ共同の所有権としてほしい。
・刑法等の法律については、日ロで十分に協議して双方に負担のないようにしてほしい。
・税金については、国税はなしとし、地方税のみにし、それで足りなければ、日ロ政府の協議によって双方が支援するようにすればよい。
・該当地域内の住民の多数決の権利には、制限を付ける必要があろう。
>「特別な制度」を住民の多数決で変えられては困る。
>独立なり、国の帰属を住民の多数決で変えられては困る。

 ロシアの都合により、北方4島の一部にロシア軍居留地があったとしても許容すべきと考える。 沖縄の米軍のようなものだと思えばよい。

「共同経済活動」
 「特別な制度」の内容にもよるが、日ロ共同の経済活動ができるというのであれば、互いにWin-Winの関係(引き分け)を持つことができるのではと思慮する。 日本人や日本企業などが活動するに当たって必要なインフラ整備などは日本側が担えば良いと思慮する。

 プーチン大統領は、日本側にまず信頼関係を築く努力を示せと言っているようだが、それはクリミア半島併合に対する日本の経済制裁解除によって示せばよく、それ以上の経済支援などの必要はないだろう。

 日本政府や日本企業が北方4島への3000億円とも言われている経済協力は、それに伴う「特別な制度」が整備された後すればよいと思慮する。 現状のロシアの法制度下での経済投資や単なる資金援助はすべきでない。 

 日本とロシアの協力によって、北方4島の経済が活性化し、将来、それが樺太などにも展開されれるような日が来ることを夢見ている。 かっての、香港のような素晴らしい地域になればと期待している。

 日ロ首脳会談の背景には、中国や北朝鮮との対応や、アメリカとの連携など、複雑な国際背景があるが、ここでは単純化して、日ロのみの課題として考察した。

北方領土問題における認識
 日本が受諾したポツダム宣言(1945)およびサンフランシスコ講和条約(1951)では、日本は千島列島(Kuril Islands)および樺太(Sakhalin)の放棄が含まれている。 この千島列島には、残念ながら択捉島(Iturup)や国後島(Kunashir)も含まれている。 ただ、色丹島(Shikotan)と歯舞群島(Habomai)は北海道であり、千島列島ではない。

 日本は、日ソ共同宣言(1956)で、色丹島と歯舞群島の返還/譲渡を求めることによって決着できるはずだった。 当時の鳩山(一郎)首相が、欲張って択捉島や国後島の返還までも求めたことにより、北方領土の返還/譲渡が頓挫し、北方領土問題という負の遺産が発生してしまった。 ちなみに、北方4島がロシアに帰属していたことは有史以来、第二次世界大戦まで一度もない。

 今では、北方領土の帰属を議論することすら無駄な時間の浪費のような気がする。 ロシアに帰属なら譲渡であり、日本に帰属なら返還となるだけである。 実質的な違いとしては、返還/譲渡するときの、日本側の経済協力の度合いぐらいの問題であり、それほど大きな問題ではないと思慮する。

 歴史的背景はどうであれ、日本は第二次世界大戦における敗戦国なのだから、帰属については受け入れるしかない。
 日本の野党やメディアが、それほど帰属を主張したいのであれば、第二次世界大戦における日本の正当性こそ、まず主張していただきたいものである。


―2016.12.18―