極暑の中の高校野球は見直さなくても良いのか

Last-modified: Sun, 21 Oct 2018 15:01:03 JST (2036d)
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 真夏の甲子園球場で開催されていた第100回全国高等学校野球選手権記念大会(高校野球)も、ようやく終了した。
 日本相撲協会などのプロスポーツ、日大アメフトなどの学生スポーツ、日本レスリング協会などの五輪関連スポーツなど、ここに至って、日本のスポーツ界の不祥事は、留まることを知らない。 スポーツ庁も大変で、「後始末だけが仕事じゃない」と言いたい気持ちは理解できる。 問題が発生する前に対処するのが、本来のあり方である。

 東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会では、暑さ対策として、サマータイム導入というバカげた案まで、真剣に検討されている。 高校野球が「極暑のグラウンドでの大会」という意味では同様に危険だが、高校野球見直しの話は、外部ではされているが、中からはあまり検討しているという声は聞こえてこない。

 高野連や高校の監督・コーチなど、高校時代などに極暑の中で野球をしてきた大人たちは、最近、はやらなくなったスポーツ根性論を未だに引き継ごうとしているのかもしれない。 しかし、時代が違うし、近年の暑さのレベルは半端ない。 あれだけ騒がれていた大相撲に対しても何ら動こうとしなかった、生中継権を持つNHKは仕方がないとしても、主催者である朝日新聞が何の問題提起もしないのは不思議だ。

 大会当事者やマスメディアが問題意識を持たず、自浄能力がないというのであれば、これこそ、スポーツ庁や文科省の出番ではないか。 高校野球が、春休みと夏休みに行うしかないとして、宗教じゃあるまいし、甲子園球場が高校野球の聖地だと言って、他のドーム球場に聖地移転したら問題だとでも言うのか。 選手の命を危険に晒してまで、ドーム球場でない甲子園球場にこだわる必要があるとも思えない。

百歩譲って、開催日程や開催球場を変えられないとしても、オリンピックのように開催時刻を見直し、早朝やナイターにずらす方法はある。 例えば、ベスト4(準々決勝)までは、朝(早朝)グループと夕方(夜間)グループに分けて戦い、準決勝と決勝は1日か2日の休養日をおいたのち、早朝に行えば良い。 大会関係者の大人たちが、たかが子供たちのために何で自分たち大人がそんな面倒なことをしなければならないのかと思っているのかもしれない。 おそらく、アスリートファーストや青少年保護の観念が欠けているからこのような見直しの発想が出てこないのだろう。

 多くのプロ野球選手は、この高校野球で活躍してからプロ入りしているのだから、プロ野球側としても、投手の球数制限なども含め、選手を過剰に酷使しないよう、高野連に要望を出しても良いのではと考える。 多くの高校球児は現状の高校野球にそれほどの不満というか、疑問を感じていないそうだ。 それは大人たちの勝手な思い込みや誤解だったり、大人たちによる洗脳だったりしているのではないか。 高校球児がそこに生き甲斐や目標を持っていたとしても、その誤りを正し、正しい方向に導いていくのが周りの大人たちの使命である。

 それすら気づかないようなレベルの低い大人たちばかりであれば、高校生に最終責任を持つべき文科省やアスリートに責任を持つべきスポーツ庁が指導すべきではないないのか。 監督省庁には、本来の使命を確実にこなしてほしい。 日頃、軍備増強を批判し、根性論を避難している朝日新聞にも、勇気ある改革を望む。

主な参考
夏の甲子園に潜む“無限ループ”は「最悪の事態」が起きるまで続くのか
熱中症の被害者が出ても、夏の甲子園が絶対になくならない事情
第97回 高校野球の危険性――真夏の炎天下での過酷な大会、取り返しのつかないことが起こる前に
高校野球を「残酷ショー」から解放するために――なぜ「教育の一環」であることは軽視され続けるのか?

 

―2018.8.21―