NHK朝ドラで先の戦争が終わった

Last-modified: Wed, 07 Nov 2018 18:08:44 JST (2019d)
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 受信料を払わされている割には、日本放送協会(NHK)の番組をあまり見ていない。 とは言うものの、日本の歴史を理解するために大河ドラマはある程度見ているし、家族が見ているので朝の連続テレビ小説(朝ドラ)も見ている。

 先週の朝ドラ「とと姉ちゃん」で、いわゆる先の戦争が終わり、今週から戦後の展開となる。 いつものことで何も今さら話題にするほどのことでもないが、今回の朝ドラも偏った戦争観でつくられている。

 大河ドラマと朝ドラとを比較することに意味があるのかどうかも分からないが、ちょっと考えてみる。

 大河ドラマは日曜日の夜の時間帯での放送であり、どちらかと言えば男性視聴者を想定していると思われる。 朝ドラは日曜日以外の朝の時間帯での放送であり、主婦層を想定しているような気がする。 そのため、大河ドラマでは男性を中心とした右派的な人物が主人公であり、朝ドラでは女性を中心とした左派的な人物が主人公になっている。 朝ドラの主人公には常に違和感を感じており、相手役に親近感を感じて見たりしている。 前回の「あさが来た」の場合は、夫婦のどちらが主人公かは知らないが、妻に親近感を感じ、夫に違和感を感じた。

 大河ドラマの多くは鎌倉時代から明治初期の時代(12~19世紀)のドラマである。 朝ドラはここ100年ほどの時代(20世紀)のドラマがほとんどである。 そのため、大河ドラマでの戦争といえばほとんどが国内の戦争であり、朝ドラでの戦争は外国との戦争である。

 何が原因かは知らないが、大河ドラマの主人公は自国を護るために、あるいは自分の大義のために勝ち負けは別として堂々と戦争を行っており、基本的には戦争否定の思想を感じない。 それに引き換え、朝ドラの戦争は、いつも戦争を起こした悪い日本政府のために犠牲になっている主人公を中心とした人々が描かれている。

 このように戦争というものに対して、同じNHKでありながら明確に違った扱いがなされていると感じる。 想定している視聴者層の違いなのか、描かれている時代背景の違いなのか、国内戦と外国戦との違いなのかは、分からない。

 大河ドラマ「北条時宗」では蒙古襲来が描かれているようである。 蒙古襲来というと、ヨーロッパでもそうだが、普通「元寇」の残虐さを連想する。 ちなみに、「元」とは中国王朝を指し、「寇」とは侵略を意味する。

 ドラマ「北条時宗」の詳細を把握していないので誤解であることを願うが、ドラマではクビライ(元)の立場からも描いており、中国を敵視しないドラマ設定になっているようである。 もしかしたら、国内戦では敵の悪口を描いてもよいが、外国との戦いでは敵である外国の悪口を描かないというのがNHKの方針なのかもしれない。 NHKでは「元寇」という言葉は放送禁止用語なのかもしれない。 「倭寇」という言葉はNHKの韓流ドラマで聞いたような気がする。 「倭(wa)」とは、日本を侮蔑した言葉である。 ちなみに、一般の日本人は自国を「和(wa)の国」とか「大和(yamato)」と呼ぶ。 「大」は大きいという意味である。

 毎回のように出てくる朝ドラでの戦争でも、日本政府の悪口は必ずと言ってよいほど出てくるが、敵国の悪口は不自然なくらい出てこない。 今回の朝ドラでも戦争を起こした日本政府は悪であり、終戦は善として描かれている。 日本の勝ち負けはどうでもよいようである。 あるいは、日本が負けることが善だと言いたいのかもしれない。

 今回、特に驚いたのが「広島・長崎への原子爆弾の投下により、終戦が早まるのではないかとの噂が流れた」というナレーションである。 戦後に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が流した噂というなら理解もできるが、戦時中に本当にこのような噂が日本で流れたのだろうか。 仮にそうだとしても、ドラマのストーリに直接関係のない、このようなナレーションをあえて流す意味がどこにあるのだろう。

 NHKは70年を過ぎても、律儀にGHQの指導を守り続けているのだろうか。 であれば、そろそろGHQの縛りから解放されていただきたいものである。

 大河ドラマで主に取り扱われている12世紀から19世紀は、当然のことながら日本の数千年の歴史のごく一部である。 これらの時代の戦争は、南北朝時代と鎌倉時代の元寇を除けば、すべて天皇の下での内戦である。

 大河ドラマでは天皇がどちらか片方に付くような戦争テーマを避けているとも言える。 天皇が片方の側に付くことによって、天皇がクローズアップされ英雄視されるのを嫌っているのだろうか。 大河ドラマで登場するとすれば、鎌倉時代に後鳥羽天皇などが希にヒール的に登場する程度である。

 あるいは、単にアメリカや中国への遠慮として、平安時代以前の永い日本史の存在を認めたくないだけなのか。

 日本にこのようなNHKがある限り、日本の「戦後」は終わらないのかもしれない。
 だから、GHQからいただいた憲法の改正も行えないのだろう。


―2016.7.4―